☆京都フィルハーモニー室内合奏団第170回定期公演
指揮:大山平一郎 独唱:晴雅彦(バリトン) 会場:京都コンサートホール小ホール(アンサンブルホールムラタ) 座席:1階3列22番(休憩前)、2階L列15番(休憩後) 今は昔、大きいことはいいことだ! と気球に乗って踊り叫んだ御仁がいたが、高度経済成長期ならばいざしらず、いつもかつも馬鹿の一つ覚えみたくなんの考えもなしに大きいことばかり追い求めていても仕方がない。 まして、手元不如意の折など身の丈にあった生活を…。 なあんてことは全く関係ない、わけじゃないけど、シェーンベルクが第一次大戦後すぐに開催した「私的演奏会」のために室内アンサンブル用に編曲されたマーラーの『さすらう若人の歌』とブルックナーの交響曲第7番を京都フィルハーモニー室内合奏団が演奏するというので、北山の京都コンサートホールまでその定期公演を聴きに行って来た。 (なお、出演を予定していた村上寿昭がアイスランドの火山噴火の影響で帰国できず、急遽大山平一郎に指揮者が変更となった) で、まずは、ヴァイオリン2にヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、クラリネット、打楽器、ピアノ、ハルモニウム各1という編成の、シェーンベルク自身の編曲によるマーラーの『さすらう若人の歌』。 実はこの編成による演奏は、クリスティアン・ゲルハーエルが歌ったCD<Arte Nova>を日ごろから愛聴していることもあって、ちっとも違和感を覚えない。 フルオーケストラ版のような音色の厚みはないが、かえって音楽の持つ若々しさ、リリカルな性質が明確に示されているのではないかと思うほどだ。 バリトン独唱の晴雅彦は、関西二期会を中心にオペラで活躍している人だけれど、ベストの状態ではなかったとはいえ、劇性に富んだ歌いぶりだったと思う。 休憩後は、ハンス・アイスラー、エルヴィン・シュタイン、カール・ランクルの編曲によるブルックナーの交響曲第7番。 こちらも、ヴァイオリン2をはじめ、ほぼ『さすらう若人の歌』と同様の編成(ただし、フルートと打楽器がホルン1に変わり、ピアノが2に増えている)で、「私的演奏会」自体が中断されたため実際に演奏されることはなかったとプログラムにはある。 この室内アンサンブル版によるブルックナーの交響曲第7番も、確かリノス・アンサンブルが演奏したCD<CAPRICCIO>を以前一度だけ聴いたことがあるのだが、『さすらう若人の歌』のように聴き込んでいないこともあってだろう、正直、本来聴こえてくるべきものが聴こえてこないもどかしさ、なんともしっくりこない感じをそこここで覚えてしまった。 もちろん、室内アンサンブルという編成だからこそ、ブルックナーの音楽進行の独特さや旋律(特に弦楽器の)の美しさ、抒情性を改めて認識することもできはしたのだけれど。 大山平一郎と京都フィルハーモニー室内合奏団は、限られた時間で作品の持つ性格を的確に示すべく健闘していたが、ところどころアンサンブルとしてのまとまりに欠ける部分や個々の奏者に粗さを感じる部分があったことも残念ながら事実である。 とはいえ、こうした珍しいプログラムでのコンサートを行った京都フィルハーモニー室内合奏団の積極的な姿勢に対しては、やはり高く評価すべきではないだろうか。 今後も、室内オーケストラ、室内アンサンブルならではの面白いプログラミングを愉しみにしていきたい。 つまるところ、大きいばかりが能じゃないってことなんじゃないのかな。 いや、もちろん大きいものには大きいもののよさがあることは充分認めた上でのことだけどね。
by figarok492na
| 2010-04-24 23:38
| コンサート記録
|
ブログパーツ
カテゴリ
全体 CLACLA日記 クラシック音楽 創作に関して コンサート記録 観劇記録 映画記録 今月のエンタメ CDレビュー バスに乗り遅れろ 狂甘糖糖員の記録 一日一枚 欧州音楽日記 真実はかく佯る 妄想映画館 雑感 その他 カルタ遊び 落語・ネオ落語記録 未分類 以前の記事
2016年 12月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 フォロー中のブログ
【こぐれ日乗】by 小暮... 小路をぬけて旅気分 たんぶーらんの戯言 みなと横浜、音楽三昧 ベ... コンサート日記 アルケミスタの日常 By The Thames 庭は夏の日ざかり まちかど芸術 雑記 Y'sRoom 黒猫チッチのひとりごと 石丸謙二郎 眺める/3 laienhaftes ... Rakastava (移... 日本妖し巡遊紀行 高島拓哉 TAKUYA ... 笛吹き千佳の日記@台北 MusicArena ヴァイオリニスト大島莉紗... まめびとの音楽手帳 新・はんきちのつぶやき 石井麻理のエッセイ ~... 木曜通信 大内山薫のバロックヴァイ... メモ帳
最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||