ちょうどブログを始めた頃のことだから、もう6年半近くも前になるか。
僕は、京都府立文化芸術会館で例年行われている京都演劇フェスティバル中の目玉企画である、新Kyoto演劇大賞という演劇コンクールの府民審査員(一般審査員)を務めた。 「京都演劇界の総会屋」を自称してその際に重ねた乱暴狼藉は、たとえそれが義憤によって為されたこととはいえ、思い起こせば本当に恥ずかしく、穴があったら入りたいような愚行ではあるのだけれど、そのとき大賞を受賞したニットキャップシアターの『ヒラカタ・ノート』を強く推したことだけは、今もって全く間違ってはいなかったと確信している。 その『ヒラカタ・ノート』を下敷きにして、ごまのはえさんが新たに書き直したその名も『ピラカタ・ノート』をニットキャップシアターの面々が上演するというので(第29回公演。ごまさん作・演出)、喜び勇んでアトリエ劇研まで観に行って来たが、確かにこの『ピラカタ・ノート』は現在の彼彼女らが上演するに相応しい力作になっていたと思う。 火曜日までの上演ということもあって、あえて詳しい内容には触れないけれど、『ヒラカタ・ノート』の重要なエピソードを残しつつ、そこに日本神話や『レインボーマン』(なにせ、主な登場人物の一人の名前は「大和タケル」だ)のモティーフを巧みに織り込んでいったストーリー展開は非常に刺激的で、音楽や舞踏、ヴォイスパフォーマンスといった劇場感覚に富んだ仕掛けともども、ごまさんの劇作家・演出家、演者としてのこの間の多様な経験や大きな変化を如実に示していたのではないだろうか。 そして、僕自身はそうした技巧的な側面ばかりではなく、ごまさんの強い表現意欲や痛切で切実な想い、さらには願いや祈りがより鮮明により明確に表わされているように感じられた点に心ひかれ、心動かされた。 (だから、2時間近くの上演時間に全く長さを感じなかったといえば嘘になるが、しかし、前半に投げかけられた謎が一挙に解き明かされていく後半の一連の流れには、やはり充分に納得がいった) 演者陣は、ときにライヴ特有の傷やぬけはあったものの、ごまさんの台本や演出もあって、個々の魅力がよく発揮されていたし(ごまさんをはじめ、今のニットの演者にはよい意味での色気を感じるときがある。例えば、高原綾子さんもそうだし、他の面々も)、このアンサンブルでなければという存在感が示されていたようにも感じた。 適うことならば、この座組み陣立てができるだけ長く続き、さらに一層練れたアンサンブルを創り上げていって欲しいと心から願う。 いずれにしても、今だからこそ観ておいて欲しい作品であり公演だ。 大いにお薦めしたい。 そういえば、公演プログラムの作・演出よりで、ごまさんが、「「ごまのはえ」などというフザケタ十字架を自らに科し、市民の敵を目指し日々がんばる私(後略)」と書いているのに、僕は新Kyoto演劇大賞時のある出来事を思い出したのだけれど(たぶん、ごまさんもそのことを意識しているのではないか?)、ここで詳しく記すことはしないでおく。
by figarok492na
| 2011-04-17 22:33
| 観劇記録
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