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アンドレア・マルコンのモーツァルトの序曲集

☆モーツァルト:序曲集

 指揮:アンドレア・マルコン
管弦楽:ラ・チェトラ
 録音:2010年10月(デジタル/セッション)
<DG>477 9445


 アンドレア・マルコンといえば、手兵ヴェニス・バロック・オーケストラとの様々なアルバムで知られるバロック音楽のスペシャリストだが、その彼がモーツァルトの序曲集を録音したというので迷わず購入した。
 ただし、今回の録音は、スイス・バーゼルに本拠を置くピリオド楽器アンサンブル、ラ・チェトラを指揮したもので、このマルコン&ラ・チェトラが伴奏を務めたドイツのソプラノ歌手モイカ・エルトマンのモーストリー・モーツァルトというタイトルのアリア集(モーツァルトやサリエリ、パイジェッロ、ヨハン・クリスティアン・バッハやホルツバウアーらの)がちょうど同じタイミングで発売されている。

 イタリア出身のバロック系の指揮者によるモーツァルトの序曲集では、リナルド・アレッサンドリーニ指揮ノルウェー国立歌劇場管弦楽団のCD<Naïve>をすぐに思い出すのだけれど、あちらが『皇帝ティトゥスの慈悲』や『フィガロの結婚』の行進曲を埋め込むなどカップリングに工夫をこらしていたのに対し、こちらマルコン盤のほうは、『アポロとヒュアキントス』、『バスティアンとバスティエンヌ』、『偽ののろま娘』、『ポントの王ミトリダーテ』、『救われたベトゥーリア』、『アルバのアスカニオ』、『ルーチョ・シッラ』、『羊飼いの王様』、『クレタの王イドメネオ』、『後宮からの逃走』、『劇場支配人』、『フィガロの結婚』、『ドン・ジョヴァンニ』、『コジ・ファン・トゥッテ』、『魔法の笛』、『皇帝ティトゥスの慈悲』と、ほぼ作曲順(ケッヘル番号順)に序曲を並べた非常にオーソドックスなプログラミングで、例えばハッセやホルツバウアー、ヨハン・クリスティアン・バッハといった同時代の作曲家たちの影響を受けながら、いかにしてモーツァルトが劇場感覚を磨きオリジナリティを確立していったかが理解できるような仕掛けとなっている。
(『偽の女庭師』と『レ・プティ・リアン』の二つの序曲が抜けているのは本当に残念ではあるが、その代わり、『救われたベトゥーリア』や『羊飼いの王様』のような比較的珍しい序曲を聴くことができるのでよしとしたい)

 また、金管楽器やティンパニを強調したり、速いテンポで激しい感情表現を繰り広げるなど、マルコンはバロック奏法を援用した楽曲解釈を行っており、モーツァルトの序曲の持つ劇(激)性や快活さをよく示していると思う。
 個人的には、悲劇性と喜劇性が混交した『ドン・ジョヴァンニ』の序曲の目まぐるしい動きが、中でもマルコンの性質に合っているような気がして、それこそエイトマンをキャスティングした全曲盤を録音してはどうかとすら感じた。

 録音は、若干すっきりしない感じがしないでもないが、作品と演奏を愉しむという意味では、まず問題はないだろう。

 適うことならば、マルコン&ラ・チェトラのペアによるハイドンやヨハン・クリスティアン・バッハの序曲集の録音も願いたいところだ。
by figarok492na | 2011-04-18 13:18 | CDレビュー
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