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劇研アクターズラボ+烏丸ストロークロック ハナレズ『山下君が死んだあとのこと』

☆劇研アクターズラボ+烏丸ストロークロック ハナレズ『山下君が死んだあとのこと』

 台本・演出:柳沼昭徳
 演出補佐:阪本麻紀
(2012年7月16日、アトリエ劇研)

*NPO劇研からの招待


 集団・組織には悪意が生まれる。
 企業や学校はもちろんのこと、宗教団体にも前衛政党にも。
 そして、劇団や演劇ユニットにも。

 劇研アクターズラボ+烏丸ストロークロック ハナレズにとって二年目の公演となる『山下君が死んだあとのこと』は、そうした集団・組織に生まれる悪意が心中「いーっ」となるほど巧く描き込まれた作品だった。

 青少年によって結成された社会人サークル「うなみ」が開催したキャンプ中、参加者の一人である山下君が事故死する。
 ところが参加者の誰もが、山下君の存在に気づいていなかった…。

 と、まさしく柳沼さんらしい設定で、キャンプまでのいきさつやキャンプでの出来事を再現しつつ作品は進んでいくのだが、個々の登場人物のエゴ、弱さが「うなみ」というサークルの中で醸成され噴出していくあり様には、かつて自分自身が経験し体験したあれやこれや(そこには自分が相手を傷つけたことや、自己保身のため相手を裏切ったことも含まれる)を思い出し、なんとも言えない気分に陥ってしまった。

 もちろん、今回の『山下君が死んだあとのこと』では、そうした悪意がどこから発せられるものであるかも明示されていたし、それではこれからどうするのか?という疑問もしっかりと呈されていたのだけれど。

 で、ここからはあくまでも僕個人の勝手な想像になるが。
 実は今回の作品、「うなみ」というサークルは普遍的な社会的集団、社会的組織ばかりでなく、広くは演劇活動そのもの、狭くはハナレズそのものとどこかで大きく重なり合っているような気がして僕には仕方がなかった。
 そして、ハナレズの面々が、こうした自己の集団や組織(とそこに加わるメンバーの一員としての自己自身)を検証するような作品に取り組んだことは、今後表現活動を続けていくことにとっても大きな意味があったように強く思った。
(柳沼さんは全く意図していないはずだけれど、澤雅展演じる小スターリニスト的な「うなみ」のリーダー中井健介に、柳沼さんがかつて師事していた劇作家・演出家をふと思い出してしまったことは、ひとまず置くとして)

 先述した澤君をはじめ、平野雄一、廣瀬伸輔、山野博生、神達由佳、高木すずな、柳泰葉、間塚愛という演者陣は、柳沼さんの意図によく沿う努力を重ねていたと思う。
(登場人物の設定た内容との兼ね合いもあって、さらにラボ生の素の言葉に近い台詞の文体がとられてもよかったのではないか? 細かいくすぐりを活かすという意味でも)

 最後に、1960年代70年代のATGの映画やテレビドラマのような作品の世界観とぴったりな、並木清貴のナレーションが非常に印象に残った。
 いや、並木さんのナレーションが作品の重要な部分を物語っていたと評しても過言ではあるまい。

 いずれにしても、ハナレズにとって三年目、そして最後となる来年の公演を愉しみにしたい。
by figarok492na | 2012-07-17 16:11 | 観劇記録
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