☆リヒャルト・シュトラウス:管弦楽・協奏曲集(9CD BOXセット)
指揮:ルドルフ・ケンペ 管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン 1枚目:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』、同『死と変容』、『ばらの騎士』組曲、『カプリッチョ』から月の光の音楽 2枚目:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』、同『ドン・ファン』、同『英雄の生涯』 3枚目:メタモルフォーゼン、アルプス交響曲 4枚目:交響詩『ドン・キホーテ』、クープランのクラヴサン曲による舞踏組曲 5枚目:交響的幻想曲『イタリアから』、交響詩『マクベス』 6枚目:『サロメ』から7つのヴェールの踊り、『町人貴族』組曲、『泡立ちクリーム』からワルツ、『ヨーゼフ伝説』の交響的断章 7枚目:ヴァイオリン協奏曲(ウルフ・ヘルシャー独奏)、家庭交響曲 8枚目:ホルン協奏曲第1番&第2番(ペーター・ダム独奏)、オーボエ協奏曲(マンフレッド・クレメント独奏)、クラリネットとファゴットのための二重小協奏曲 9枚目:ブルレスケ、家庭交響曲余禄、交響的練習曲『パンアテネの行列』(以上、ペーター・レーゼルのピアノ独奏) <WARNER>999 4317802 先日生誕150年を迎えたリヒャルト・シュトラウスの管弦楽作品を語る際、どうしても忘れてはならないのが、1970年から76年にかけてドレスデンのルカ教会で継続的にセッション録音されたルドルフ・ケンペとシュターツカペレ・ドレスデンによるこの管弦楽曲・協奏曲集だろう。 収録作品の多さでは、先頃亡くなったカール・アントン・リッケンバッハーとバンベルク交響楽団等が進めたKOCHレーベルのシリーズに譲るものの、演奏の質の高さでは、やはりケンペとシュターツカペレ・ドレスデンのほうに軍配を挙げざるをえまい。 オーケストレーションの巧さ、鳴りや響きの良さ(例えば、『ティル』の死刑執行前の高ぶりや、『イタリアから』の「フニクリ・フニクラ」の熱さなど、ぞくぞくする)はもちろんだけれど、リヒャルト・シュトラウスの音楽の持つ別の一面、抒情性や寂寞感(『ドン・ファン』やメタモルフォーゼン等々)に対する感度の的確さも一連の録音の大きな魅力である。 シュターツカペレ・ドレスデンも、そうしたケンペによく応えて、インティメートな雰囲気に満ちたまとまりとバランスのよいアンサンブルを造り上げている。 また、『ばらの騎士』組曲など、劇場作品からの管弦楽曲では、指揮者オーケストラの劇場経験の豊かさがよく発揮されて、音楽の勘所の押さえ具合に全くくるいがない。 『ドン・キホーテ』のポール・トルトゥリエ(チェロ。渋い)とマックス・ロスタル(ヴィオラ)、二重小協奏曲のマンフレッド・ヴァイセ(クラリネット)とヴォルフガング・リープシャー(ファゴット)も含めて、独奏陣もあざとさのない演奏を繰り広げており、ケンペとシュターツカペレ・ドレスデンの音楽性によく重なっていると思う。 そして、このBOXの目玉と言ってもよいのが、『カプリッチョ』の月の光の音楽だ。 EMIレーベルの計画に入っていなかったため、旧東ドイツのエテルナ・レーベルからLPとしてリリースされて以降、長らく日の目を見てこなかった録音だけれど、ホルン協奏曲でも優れたソロを聴かせるペーター・ダムが美しい旋律を朗々と吹き切って心をぐっとつかまれる。 3分と少しのこの一曲のためだけに、9枚組のセットを購入しても惜しくないと思えるほどである。 (一応、1枚目と同じカップリングの廉価CDが今年になってリリースされたが) そうそう、このBOXでは、国内のEMIレーベルのSACD用にリマスタリングされた音源が使われているが、あまりの分離の良さに、これってちょっとやり過ぎなんじゃないの、とすら言いたくなるほどのクリアな音質となっている。 EMI特有のじがじがした感じは否めないが、音楽を愉しむという意味では全く問題あるまい。 しかも、タワーレコードやHMVのネットショップでは、この9枚組のBOXセットが税込み3000円を切るというのだから驚く。 というか、なんとも申し訳ないかぎりだ。 リヒャルト・シュトラウスの生誕150年に相応しいCDで、クラシック音楽好きにはなべてお薦めしたい。
by figarok492na
| 2014-06-15 21:53
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