☆笑福亭笑利さんのチャリティー落語会
出演:笑福亭笑利さん、月亭太遊さん
(2015年5月10日15時半開演/出町柳「かぜのね」)
ネオラクゴ・フロンティアでの二度の高座がとても印象深い笑福亭笑利さんだが、できるだけ経験を積んだほうがいいという師匠笑福亭鶴笑さんの教えに従って、積極的に活動を続けている。
その笑利さんが、出町柳のカフェ「かぜのね」で、会場費を除く収益をがん患者支援団体に寄付する旨のチャリティー落語会を開催した。
(かぜのねは、京阪叡電・出町柳駅から歩いてすぐ。名曲喫茶・柳月堂側の細い路を少し入ったところにある。カフェの奥に、和室というか畳敷きの広いスペースがあって、そこが会場だった。なかなかいい感じ)
テーマは、笑いで免疫力アップ。
にプラスして、チャリティーは(単純な)善ではなく、伝統は保守ではないという、笑利さんの想いが込められた会ともなっていた。
実際、会の説明を兼ねた開口一番のおしゃべりでは、20代初めの土砂災害のボランティアでの微妙な体験が語られていたが、淡々とした口調である分、かえってその微妙さが強調されていたのではないか。
で、一席目は、古典の『手水廻し(ちょうずまわし)』。
大阪から訪れたお客さんから「ちょうずをまわして欲しい」と言われた丹波の宿屋の主人たちは、物識りの坊さんの助言を受けて長い頭(長頭=ちょうず)の男を連れてくるが…。
というおなじみの展開で、長頭男が頭を回す場面もそうなのだけれど、宿屋の主人たちの勘違い、やり取りに笑利さんの特性がよく表われていたように思う。
続いて、笑利さんと漫才時代の同期でにあたる太遊さんが、会のテーマに沿う内容ということで、ネオラクゴの十八番『来て!観て!イミテイ村!』をかける。
笑利さん主催の会であることや、会場の雰囲気、お客さんの顔ぶれなど、全体の流れを見計らった、かろみのある口演だった。
三席目は、再び笑利さんで、丹後峰山(父方の田舎だ)に伝わる昔話を古典のスタイルで落語家した『六助稲荷』を演じた。
世話焼きだけれど、ときにそれが行き過ぎる六助。
そんな六助が、野良作業のついでに狐の巣穴をきれいにしたところ、夜になって白狐が恩返しに現れた。
喜び勇む六助だったが…。
小さな親切大きなお世話って言葉があったっけ。
いくら自分がよかれと思っても、必ずしもそれが相手のためになるとはかぎらない。
まさしく今回の会のテーマとも重なる内容で、後半の六助の大きな感情の変化が作品の肝となるように感じた。
再演再々演を心待ちにしたい。
そして、最後は笑利さんと太遊さんのおしゃべりで〆た。
約90分。
休日の午後に相応しい会であり、会場だった。
次回も本当に愉しみだ。