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ワルター・ウェラーの死を悼む

☆ワルター・ウェラーの死を悼む


 ここのところ朝日新聞夕刊の「人生の贈りもの わたしの半生」で、まもなくウィーン・フィルのコンサートマスターを退くライナー・キュッヒルが興味深いエピソードを語っているが、そのウィーン・フィルのコンサートマスターから指揮者に転じた、ワルター・ウェラーが亡くなった。76歳。
 1939年にウィーンに生まれ、キュッヒルの師匠でもあるフランツ・サモヒルにヴァイオリンを学び、カール・ベームやホルスト・シュタインに指揮を学んだ。
 幼少の頃から優れたヴァイオリニストとして注目され、10代後半でウィーン・フィルに入団し、ウィーン・フィルのメンバーとともにウェラー弦楽4重奏団を結成した。
 その後、ウィーン・フィルの第1コンサートマスターに就任し、室内楽演奏ともどもさらなる活躍を嘱望されたが、1960年代末に指揮活動を開始する。
 以降、ウィーン国立歌劇場やウィーン・フォルクスオーパーの指揮台に立ったほか、デュイスブルク市、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団、ロイヤル・リヴァプール・フィル、ロイヤル・フィル、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団、バーゼル市歌劇場とバーゼル交響楽団、ベルギー国立管弦楽団の音楽監督や首席指揮者を歴任した。
 また、1970年代に、ロヴロ・フォン・マタチッチの代理としてNHK交響楽団の定期公演に登場するなど、何度か来日している。
 ウィーン・フィルやウェラー弦楽4重奏団時代からなじみの深いDECCAレーベルに、ロンドン交響楽団とロンドン・フィルを振り分けたプロコフィエフの交響曲全集、スイス・ロマンド管弦楽団とロンドン・フィルを振り分けたラフマニノフの交響曲全集、CHANDOSレーベルに、バーミンガム・シティ交響楽団とのベートーヴェンの交響曲全集(バリー・クーパー補作による第10番第1楽章も含む)、フィルハーモニア管弦楽団とのメンデルスゾーンの交響曲全集等、数々の録音を遺しており、単純な手堅さ丁寧さに留まらない、例えばプロコフィエフの第2番のようなシャープでクリアな演奏も少なくないのだけれど、それでもなお、正直彼の本領はウェラー弦楽4重奏団においてこそ十二分に発揮されていたような気がしてならない。

 ウェラーを悼んで、ウェラー弦楽4重奏団が演奏した『モーツァルトのカルテット・パーティ』<DECCA/タワーレコード>を聴く。
 ハイドンが第1ヴァイオリン、ディッタースドルフが第2ヴァイオリン、モーツァルトがヴィオラ、ヴァンハルがチェロを務めた弦楽4重奏のコンサートを再現したアルバムで、モーツァルトの第3番、ハイドンの第3番、ディッタースドルフの第5番、ヴァンハルのヘ長調の4曲が収められている。
 ウィーン風の艶やかな音色を保ちつつも、粘らない流麗で快活な音楽運びと、均整のよくとれた演奏だ。
 作品のつくりもあって、ウェラーの第1ヴァイオリンも魅力的である。

 深く、深く、深く、深く黙祷。
by figarok492na | 2015-06-18 17:54 | CDレビュー
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