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ルサンチカ『霧笛』

☆DIVE 2016 京都造形芸術大学卒業生優秀作品展参加作品
 ルサンチカ『霧笛』

 作:イトウモ(象牙の空港)
演出:河井朗
原作:レイ・ブラッドベリ『霧笛』
出演:近藤千紘
(2016年3月27日16時上演の回/ART ZONE)


 先ごろ京都造形芸術大学を卒業したルサンチカの河井朗と近藤千紘が、河原町三条の展示スペースART ZONEで公演を行うというので足を運んだ。
 テキストは、レイ・ブラッドベリの短篇小説『霧笛』を、河井君の依頼でルサンチカとは浅からぬ関係にあるイトウモが一人芝居に仕立て直したもの。
 原作(創元SF文庫の『ウは宇宙船のウ』で手軽に読むことができる)は、「ぼく」(ジョニー)とマックダンの会話や行動を通して、灯台に引き寄せられる怪物(恐竜)の姿を描いたものだけれど、イトウモはそうした作品の結構と核となる部分を活かしつつ、ルサンチカの面々が今どうしてこの作品を取り上げるのかということを一層際立たせる改作を行っていた。
(余談だが、確かこの『霧笛』という作品によって、自分はジョン・ヒューストン監督の『白鯨』の脚本に加えられることができた旨をブラッドベリ自身が語っていたはずだ)

 なぜ今この『霧笛』を上演するのか。
 それを、惜別であり告別であるという言葉で表してしまうと、あまりにも単純に過ぎるかもしれない。
 けれど、作中の怪物のあり様や、それを語る人の姿に、僕はどうしても「何かが終わってしまったこと」への痛切さを感じざるにはいられない。
(その意味でも、この『霧笛』は、卒業制作の『春のめざめ』と「対」になっている)

 と、言っても、そうした痛切さが、大仰にこれ見よがしに振りかざされているわけではない。
 入口ばかりか片側横面ガラスばりで、3階まで吹き抜け、さらにスペース中央には2階までの小ぶりならせん階段が設置されたART ZONEをあるときは駆け上がり駆け下り、あるときは留まりながら、近藤千紘は少年らしさと少女らしさが入り混じった容姿と声である種の軽みも保ちながら演じ切る。
 ただ、だからこそ、なおのことじわじわと伝わってくるものがあるのだ。
 もちろんそれは、ART ZONEの構造、それより何より近藤さんという演じ手の特性魅力を十二分に知り尽くした河井君の演出の力によるものでもあるのだけれど。

 先週の冨士山アネットの企画中に急遽思い立った公演だけに、稽古時間等々、大変さはうかがえたし、ライヴ特有の傷も観受けられたが、かえってその分、近藤さんや河井君の長所プラスの部分を再確認することもできたのではないか。
 僕は、こうして彼女彼らの公演を目にすることができて、本当によかったと思う。

 河井君、近藤さん、改めてご卒業おめでとうございます。
 そして、二人の今後のさらなるご活躍を心より祈っています。
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by figarok492na | 2016-03-27 19:21 | 観劇記録
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