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犬神家の末裔 第5回

*犬神家の末裔 第5回

 那須市長選は地域活性化の現職カドワキダイサクをご支援ください。
 那須市長選は地域活性化の現職カドワキダイサクをご支援ください。

 喧しい選挙カーが対向車線を走り抜けて行った。
「市長選か」
「次の日曜日が投票日」
「門脇って現職だよね」
「うん。今度の選挙に勝ったら、市民会館潰して、ムジークなんたろいう立派なコンサートホール建てる言ってて。地域活性化じゃ、松本や長野には負けておられんのじゃ言って」
「松本は小澤征爾で、長野は久石譲だもんね」
「なんか鈴ちゃんにまで連絡あったんだって。ぜひ、N響で杮落ししたいからって。それで、一応うちにも断りの挨拶に来たんだけど、ばあちゃん、無駄金使ってどうするか、この抜け作がって一喝したんだ」
「抜け作」
「うん、抜け作」
「小枝子おばさん、百近いんじゃない」
「今年で九十八だけど、まあだ矍鑠としてる。朝昼晩て、しっかりごはんも食べてるし。頭もしっかりしたもんで、和俊おじさんなんか、百二十ぐらいまで生きるかもしれんよて。憎まれっ子世に憚るだって自分で言うてるくらい」
「小枝子おばさんらしいなあ」
「そうだよ。まあ、コンサートホールはばあちゃんの言う通りだと思うよ。あんなの造ったところで、ゼネコン喜ばすだけだから」
「田中さんが知事になって、だいぶん変わったんじゃないの」
「いやあ、なかなか。那須もまだまだ田舎だからね。地元の人間が潤うんならまだしも、美味しいところは全部大手が持って行くんだって、これは信哉の受け売りだけどね」
 信哉は睦美の夫で、信州新報の記者をやっている。
「だいたい古いお店が潰れて、ドラッグストアや百均ばっかり建ってるんだ。地域活性化もへったくれもないわ。あっ、こんなことばっかり言ってるから、戌神の家はあけーて噂されるんだった」
 睦美がちろっと舌を出した。
 もともと信州は左翼の強い土地柄だし、私生活は置くとして、戌神恒兵衛自身、東の戌神西の大原と呼ばれた進歩的経営者として知られた人だった。
 戦前陰ながら無産政党を支援していたという逸話もあるだけに、その末裔たちがリベラルな思想に走ったところでなんら不思議ではない。
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by figarok492na | 2016-04-08 16:45 | 創作に関して
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