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一日一枚 16:ピーターと狼

 ☆プロコフィエフ:『ピーターと狼』、古典交響曲他
  クラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団他
  <DG/ドイツ・グラモフォン>427 678−2

 『ピーターと狼』なんて、お子様向きの作品じゃないの。
 などと思っている人の数は、結構多いような気が僕にはする。
 確かに、非常にわかりやすい物語と非常にわかりやすい音楽の組み合わせで、一聴だけでは、「なんじゃ、この子供だまし」と思わないこともない。
 けれど、プロコフィエフは20世紀を生きた、いわゆる現代の作曲家なのだし、しかも彼は、あのソ連で音楽活動、だけではなく、生活そのものを続けていた人間なのでもある。
 物語や音楽そのものに直接的な含みがあるかどうかは別にして、『ピーターと狼』は、やっぱり一筋縄ではいかない作品なんじゃないのかなあ、という考えを僕は持っているのだけれど。
 果たして、どうだろう?

 で、そんなこちらの気持ちとは裏腹に、このCDで聴かれる『ピーターと狼』は、全く屈託がない。
(むろん、音楽の面では、他のプロコフィエフの作品で聴かれるような「モダアン」な部分が浮き上がっていないこともないが)
 バーバラ・スコヴァの語りは、日本盤の坂東玉三郎丈のべちゃべちゃべちゃべちゃべちゃついた語りとは対照的に、ドライでクリア、かつドラマティックなもので、ドイツ語であるという難点を除けば、実に親しみやすい。
 カップリングされている古典交響曲(これは、本来「含み」の多い音楽だ)、行進曲、ヘブライの主題による序曲は、全て耳馴染みのよい音楽だし、クラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団も、優れた技術とまとまりのよいアンサンブルで、高い水準の演奏を繰り広げている。
 何はともあれ、お子様といっしょに気軽にお楽しみいただける一枚であろう。
(ニコラウス・アーノンクールとヨーロッパ室内管弦楽団が同じ曲目を演奏したら、どういうことになるんだろうな)
by figarok492na | 2005-12-05 12:25 | 一日一枚
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