☆ブラームス:歌曲集
ロマン・トレケル(バリトン)
オリヴァー・ポール(ピアノ)
<ARTE NOVA>74321 87069 2
都に雨の降るごとく、我が心にも。
いやや、涙なんて降らないって。
てか、魯迅じゃないけれど、『花なきバラ』なんて書いて、そよよそよよと涙を流してる状況じゃない。
泣くぐらいなら、フランスの学生を見習ってさっさと立ち上がれ!
とは言うものの、雨の降っている日には、なぜだかしっとりしとしととした音楽が聴きたくなってしまう。
で、ブラームスの歌曲集のCDを聴くことにした。
ううん、やっぱり雨の日にはこれしかない。
と、断言すれば、牽強付会に過ぎる、のそしりをまぬかれないだろうが、少なくとも情緒纏綿(じょうしょてんめん、って言うんだよね、こういう場合は確か)と綴られている歌曲の数々は、雨でどこか沈んだ心にすすっと滲み渡る。
しかも、トレケルの歌が、そんなブラームスの音楽にぴったり。
ゲルハーエルみたく暖かい声質の持ち主なのだけれど、さらに情感たっぷり、切々とした調子で歌い上げているのだから、何も言うことはない。
ただし、シューベルトでこの歌い口だと、ちと臭いかもしれないが。
いずれにしても、声楽好きの方、ブラームス好きの方には、お薦めの一枚だ。
(からっと晴れ上がった日に聴くと、ちょっとえっと感じるかも…)