☆ラヴェル:ピアノ協奏曲、左手のためのピアノ協奏曲他
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)
ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団、ロンドン交響楽団
<DG/ドイツ・グラモフォン>POCG−10138/国内盤
今回は、クリスティアン・ツィマーマンのピアノ独奏とピエール・ブーレーズの伴奏によるラヴェルのピアノ協奏曲のCDを聴くことにする。
このCDには、ピアノ協奏曲(第3楽章に、伊福部昭の『ゴジラ』にそっくりな旋律が登場する)の他に、隻腕のピアニスト、ルートヴィヒではない、パウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれた左手のためのピアノ協奏曲、さらには『高雅にして感傷的なワルツ』が収められているが、いずれをとってもラヴェルという作曲家の面目躍如、計算に計算され尽くした音楽世界を堪能することができる。
(ピアノ協奏曲で言えば、第2楽章などそのわかりやすい例だろうが、両端楽章の「とっちらかり」具合も十二分に計算されたものであることも、また指摘しておかなければなるまい。って、まるで僕の敬してやまないある作家の作品のようだな、こりゃ)
知情意、どの面をとっても安定したツィマーマンのソロに加え、ブーレーズも作品の持つ性質を適確に汲み取った伴奏を行っていて、いわゆるスリリングさには若干不足するものの、安心して音楽を愉しむことができる。
(なお、ピアノ協奏曲ではクリーヴランド管弦楽団が、左手ではロンドン交響楽団が、それぞれ伴奏をつとめている)
また、『高雅にして感傷的なワルツ』(クリーヴランド管弦楽団)も、例えば、『ラ・ヴァルス』のひな形的な部分を明示するなど、しっかりとツボを押さえた演奏だと思う。
中古で、税込み1200円程度までなら、大いにお薦めしたい一枚だ。