☆スタンフォード:交響曲第5番、アイルランド狂詩曲第4番
ヴァーノン・ハンドリー指揮アルスター管弦楽団 1987年、デジタル録音 <CHANDOS>CHAN 8581 前回のCDレビューでエルガーの交響曲第1番を取り上げるにあたって、パーセル以降、イギリスは音楽の不毛地帯みたいなことを記したけれど、あれはあくまでもイギリス出身の作曲家に関する話であって、ヨハン・クリスティアン・バッハやパパハイドン、さらにはウェーバなんかを持ち出さずとも、18世紀、19世紀にも、イギリスにおける音楽活動が盛んだったことはおわかりいただけると思う。 が、一応、念のため。 それに、いくらめぼしい作曲家がいなかったからといって死んで花実が咲くものか、違う違う、それこそ枯れ木に花は咲かないし、突如として砂漠にライ麦が実るはずはない。 エルガーの交響曲が生まれるにあたっては、それなりの先行者たちがいた訳で、その中でもパリーやスタンフォードという二人の作曲家の存在は忘れちゃいけないんじゃないだろうか。 てか、好きなんだよなあ、パリーとスタンフォードの交響曲のことが、僕は。 そりゃ確かに、この二人の交響曲をけなそうと思えばいくらだってけなせるよ。 初期から中期、はては後期にいたるドイツ・ロマン派の影響ははなはだしいし、エルガーほどの作風の斬新さというものも、もちろんない。 でもね、影響大いに結構じゃないですか。 だって、パリーとスタンフォードの交響曲はとても耳なじみがいいんだもの。 まさしく、イギリスの田園風景を眺めながら、来し方行く末、ならぬ、来し方来し方に思いを馳せる、そんな柔らかくって甘やかな心持ちにどっぷりたっぷりと浸れるのだから。 なんの文句があるものや。 で、あなたパリーがひときわドイツ・ロマン派(と言うより、ブラームス)の影響丸出しなら、こなたスタンフォードは、郷里アイルランドの雰囲気が巧みにブレンドされた折衷風とでも評することができるだろう。 この交響曲第5番も、そうしたスタンフォードらしさがよく表れた、美しいメロディーに満ちあふれた作品で、全篇、実に聴き心地がよい。 また、カップリングのアイルランド狂詩曲第4番(トラック5)では、12分ちょっと過ぎあたりに打楽器連打というなかなかの聴きどころも控えている。 惜しくも昨年亡くなったヴァーノン・ハンドリーの指揮するアルスター管弦楽団は、丁寧かつ真摯な音楽づくりで、作品の長所をきっちりと表現し、短所をうまく補っていて、まさしく過不足のない演奏。 加えて、シャンドス・レーベルらしく、残響豊かでメロウな録音も申し分ない。 あくまでも個人的な好みと断った上でだが、中古で税込み1200円程度までなら即買いの一枚だと思う。 喰わず嫌い、ではない聴かず嫌いはやめて、スタンフォード(ついでにパリー)の交響曲を聴きましょうや! ねえ、皆の衆。
by figarok492na
| 2009-01-21 15:46
| CDレビュー
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