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剃刀佐次郎御用帖より(朗読のための小品)

「旦那、それなんですがね。あたし見ちゃったんですよ」
 と、角蔵が赤くなった鼻の頭を左の人差し指でせわしなく掻きながら言った。
「見た、何を見たと言うのだ」
 と、千田(ちだ)万兵衛が聞き返した。
「旦那、絶対に他人(ひと)には内緒ですよ、ここかぎり」
 角蔵はそう声を潜めると、
「佐々木の旦那がね、これと歩いてたんです、これと」
と、右の小指を立てて見せた。
「ほう、佐々木が女と」
「ええ、それも小股の切れ上がっためっぽういい女でしてね、あたしゃ驚いたのなんの」
「角蔵、俺が女と歩いていて何が悪い」
 突然、衝立の向こうから佐々木佐次郎が顔を出した。
「うわっ、びっくりしたなあもう。いるならいるで一言そうおっしゃって下さいよ」
「俺がいて悪いか」
「ほら、そうやってすぐ凄むんだから。ねえ、旦那」
 そう言って、角蔵は万兵衛に助けを求めた。
「角蔵ではないが、わしもお主が女といっしょに歩いているとはちとげせんのだがな」
「千田さん、あれは妹ですよ」
「妹」
「妹とな」
「ええ、妹です。腹違いじゃありますがね」
 と、佐次郎は付け加えると、少し照れくさそうな顔をした。
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by figarok492na | 2009-02-25 15:56 | 創作に関して
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