敷居が下がり、間口が広くなるということは、何事につけ大切なことだ。
いくらお高くとまったところで、それを支える人間がいなければ、早晩そんなものは亡びてしまう。
が、しかし、敷居を下げ過ぎ間口を広げ過ぎて、縁なき衆生がどどっと舞い込むことも、当然迎える側は覚悟しておかなければならない。
そして、玉石混交という言葉があるが、たとえ相手が玉にならざる石であれ、少なくともその石が軽石だの漬物石だのなんだのと、使い勝手のある石となるよう努めることが、その覚悟には含まれていなければなるまい。
敷居を下げた、間口を広げた、あら厄介な連中までがやって来た、と顔を顰めているようでは、それこそ先が思いやられる。
また、来る者は拒まず去る者は追わずと言うけれど、少なくとも去る者に関しては、努力に努力を重ねた上でなお、そうなってしまった時に口にすべき言葉だろう。
だいたい、そうした言葉を何のひっかかりもなしに使って平然としているような人間には、敷居を下げ間口を広げる資格などないし、逆に、こういう無責任な人間にほいほいと近寄っていくような人間は、やっぱり度し難いと、僕は強く思う。