笑うツボは人それぞれだから、自分が笑えないからといって相手を面白くないと決めつけるのは大間違い。
げんに、京都ロマンポップのさかあがりハリケーンVol.3『元禄桜乃恋 油蟲舐メ鬼懺悔 ~旗本松平夢之丞ノ黒幕~』(向坂達矢さん脚本・演出、アートコンプレックス1928)も、僕自身は正直ほとんど笑うことができなかったのだが、多くのお客さんからたびたび大きな笑いが起こっていた。 で、どうして自分が笑えないのか、公演を観ながらつらつら慮ってみたのだけれど、これはまずもって向坂さんの笑いのツボとこちらの笑いのツボの相性がよくなかったということにつきるのではないだろうか。 (一つには、世代の違いも大きいのかもしれないが) あえてグランギニョル(フランスの見世物芸、大衆残酷劇)と名乗った向坂さんの意欲は買うし、かつてのアングラ演劇を想起させるような作品の結構、仕掛けも充分に理解はできたんだけど、笑いの波に乗ろうとすれば乗ろうと意識するだけ、僕はどうにも笑えなくなってしまった。 付け加えるならば、前回のさかあがりハリケーン同様、京都ロマンポップの面々があまりにも真剣というか直球勝負というか、力技の演技を繰り広げてきたのだが、もうちょっといいかげんというか、「フラ」があるというか、全体的にもっと余裕を持ったスタイルのほうが、僕の笑いの好みには合っているのだ。 (その意味で、沢大洋さんが台詞をかんだところで合田団地君がふいたのには、大いに笑った。これが計算ならば素晴らしいし、そうでなくとも絶対に恥じることはない。なにせグランギニョルなんだもの、笑わせるためならなんでもありだ) 上述した如く、京都ロマンポップの面々や客演陣(合田君のほかに、肥後橋輝彦さん、藤原蛍太朗さん)は、本公演と比べても遜色のない熱演を披露していたのではないか。 沢さんの額から流れる汗、向坂さんの含羞、七井悠さんの森本レオ風な軽い語り口、高田会計さんの唾などが、特に印象に残った。 それと、演者のバランス上、どうしても玉一祐樹美さんがコメディエンヌ的性質を大きく負っていて(誉め言葉でもあるけれど、根本的に浅田麻衣さんは「ヒロイン」だろうから)、実際敢闘賞に値する奮闘ぶりだったが、その分どこか無理があるというか、意識無意識は置くとして、内面で嘘をついているように感じられた場面が、僕にはいくつかあった。 (例えば、薬物依存のくだりでの演技とか) あと、これは余談だけれど、京都ロマンポップはもしかしたら京都小劇場界の無名塾なんじゃないかなとちょっと思ったりもした。 と、言って、沢さんを仲代達矢であるとか、浅田さんを若村真由美であると当てはめたいわけではないし、ましてや彼彼女らの演技力を必要以上に持ち上げたいわけでもないが。 彼彼女らの演劇への向き合い方、その熱さや一途さに接すると、僕はどうしても無名塾のことを思い出してしまわざるをえないのだ。 なお、今回も浅田麻衣さんにご招待いただきました。 浅田さん、本当にありがとうございました。
by figarok492na
| 2010-12-06 15:14
| 観劇記録
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