☆ペーパーバード 幸せは翼にのって<2010年・スペイン>
監督:エミリオ・アラゴン
(2012年1月2日、京都シネマ・1)
いやあ、新年早々、いい映画を観たなあ。
本当はいいなんて言葉、軽々に使いたくないんだけれど、そう思ってしまったんだから仕方がない。
約2時間の上映時間があっと言う間、と、言うより、まだもっと観ていたいと感じているうちに終わってしまった。
京都シネマでは上映が始まったばかりということもあって、詳しい内容についてはあえて触れないが、スペイン内戦後のフランコ独裁政権下、戦争の深い傷を心に抱いた芸人たちのあれやこれやが、喜怒愛楽交えながら非常に丁寧に描き込まれていて、強く心を動かされた。
主人公のホルヘ(イマノル・アリアス)やエンリコ(ルイス・オマール)、孤児のミゲル(ロジェール・プリンセプ)といった登場人物の細やかな心の動きや、まるで歌を歌っているかのような言葉のやり取りにまずもって心魅かれるし、細かいエピソードの積み重ね方や伏線の張り具合も見事というほかない。
また、スペインを代表するサーカス芸人一家に生まれ、自らも舞台で活躍したという監督自身の経験からくる、芸人たちや舞台、劇場への深い愛情には心打たれるし、表現者が自国の歴史や社会そのものに向き合うことの大切さもストレートに示されていて大いに納得がいく。
それに、役者陣のなんと素晴らしいことか。
上述した三人はもちろんのこと、いわゆる端役と呼ばれるほんの僅かな出演時間しかない人たちの存在感にも、僕は圧倒された。
加えて、風景の描写や時代考証における細やかな作業にもほれぼれするほかなかった。
この作品を観た人とゆっくりたっぷりおしゃべりがしたくなるような、本当の映画好きにお薦めしたい一本だ。
ああ、面白かった!