☆第15次笑の内閣『ツレがウヨになりまして。』
作・演出:高間響
アフタートークゲスト:鈴木邦男
(2012年5月26日、京都大学吉田寮食堂)
血が騒いだ。
と、言っても客入れでかかっていた軍歌にではない。
(いや、たぶん春日八郎や鶴田浩二だろうその歌声には、ちょっとばかり血は騒いだが…)
第15次笑の内閣『ツレがウヨになりまして。』というお芝居そのものに血が騒いだのだ。
28日まで公演中ということだけではなく、詳しい内容についてはあえて絶対記さないが、『ツレがウヨになりまして。』は、昨年世情を賑わせた某俳優夫妻の騒動を大きな材料に、いわゆる「ネトウヨ」の問題、さらには国を愛することに人を愛することなどなどについて、高間響の想いのたけが盛り込まれた作品で、そうしたあれこれに関し、日頃いろいろと考えていた人間にとっては、うんそうだと内心大きく頷いたり、おおそうきたかと感心したりと血が騒ぎ、心強く動く内容となっていたのである。
むろん、そこは笑の大学、ならぬ笑の内閣を標榜するだけあって、きっちりコメディのスタイルが守られていたことも事実であり、硬軟取り揃えたくすぐり仕掛けのオンパレードには大いに笑わせられた。
確かに、脚本、演技ともに粗さを指摘することは簡単だし(ただ、かつて「演劇は政治だ」と断言した鈴江俊郎だって、ここぞというときにかぎってかんだりしていたが…)、笑の内閣がさらなるステップアップを遂げるためには、やはり精度を如何に高めていくかが大きな課題となるだろうとも考えるが、そこばかりに気が行って、角を矯めて牛を殺す、じゃない、角を立てて全く笑わぬ客になってしまうのは、非常にもったいないとも思う。
(いや、実は全く笑わなくったっていいんだけれど、どうして笑えないかの本当の理由について自覚しておく必要はあるんじゃないかとは思う)
演者陣はライヴ特有の傷はありつつも、各々の役柄に合った演技を行っていたのではないか。
個人的には、脇の位置にある焼酎ステラの細かい演技が印象に残ったことを記しておきたい。
そして、忘れてならないのが、鈴木邦男を迎えてのアフタートーク。
これはもう、滋味豊麗圧巻の二語だった。
これまたあえて詳細については記さないが、様々な経験に裏打ちされた言葉は、思想信条の枠を超えて趣向するところ多く、特にその組織に対する感慨は左翼活動の経験者としては、反省するところ大だった。
いずれにしても、観て置いて正解の公演。
ああ、面白かった!
あっ、あと片山杜秀だったら、この『ツレがウヨになりまして。』をどう観るんだろう。
ちょっと気になるところだ。