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川村毅はこうこなくっちゃ 『新宿八犬伝 第三巻 -洪水の前-』

☆京都造形芸術大学舞台芸術学科 3回生川村クラス発表公演
 『新宿八犬伝 第三巻 -洪水の前-』

 作・演出:川村毅
(2013年11月2日17時半開演/京都芸術劇場春秋座)


 1991年に初演された川村毅の『新宿八犬伝 第三巻 -洪水の前-』が、京都造形芸術大学舞台芸術学科の3回生川村クラスの発表公演として再演されるというので、京都造形芸大内の芸術劇場春秋座まで足を運んだ。
(と、こう書くのはずるいかな。本当は出演者の学生さんからお誘いがあって観に行ったのだけれど、当時の川村さんや第三エロチカのことを一応知っている人間としてはついついそんな風に書いてしまいたくなるのである)

 で、観ての感想。
 途中までは、「アクチュアリティとはなんぞや?」とか、「近過去は如何に表現すべきか?」なんて小難しいことを考えたりもしていて、例えば森高千里や湾岸戦争なんて設定はそのままなのに、都知事の名前はなんで猪瀬なんだなんてことを思ったりもしたのだけれど、まあそれはそれ。
(そうそう、公演パンフの用語解説に『スーダラ節』の項目も割かれていたのだが、あれだけでは、どうして劇中に植木等や『スーダラ節』が登場するのかわからないんじゃないかな。実はこの作品の初演当時、『スーダラ伝説』なる楽曲によって植木等が再ブレイクしていたのだ。それにしても、『スーダラ節』の作詞者=青島幸男が都知事になるなんて、川村さんも思ってもみなかっただろう)

 演者陣の技量、だけではなく、テキストへの向き合い方や演技演劇への立ち位置の問題もあったりして、心身両面の力技でねじ伏せるべき戯作性(しかも、仕込みが非常に多い)が徹底され切れていないもどかしさを感じた箇所があったことも事実だけれど、物語が転び出し、邪劇性がいや増しに増したあたりからは、そうだそうだこれこれこうこなくっちゃと、川村ワールドを愉しむことができた。
 そして、細かい部分は置くとして、この作品の根底にある事どもは、残念ながら今もって大きなアクチュアリティを持っているものだとも強く思った。
(わかりやすく言えば、堤幸彦の『トリック』に様々なメッセージ、思考の時限爆弾を仕掛けたのが川村ワールド。違う逆だ、川村さんらの作品を咀嚼、ではない希釈化してみせたのが『トリック』だ)

 田渕詩乃、田中祐気、田中紗依、福久聡吾、嶋本禎子、福田沙季(あいにく今日はアンサンブルのみ)ら、学外の活動でおなじみの面々も出演。
 全ての出演者参加者の今後のさらなる研鑚と活躍を心より期待したい。

 余談だけど、ワーグナーの歌劇『タンホイザー』序曲が効果的に使用されていた。
by figarok492na | 2013-11-02 23:40 | 観劇記録
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