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カルタ遊び その8

「はい、向日町公平探偵事務所」
 と、俺が応えたところで、電話はぶつりと切れた。
「ねえ、これで三回目でしょう」
 薫が俺にそう言った。
 薫はソファーに寝そべったままだ。
 ソファーから飛び出た左足に、ずっとマルコンがじゃれついているというのに。
「いや、これで四回目だよ」
「えっ、だって」
「君はさっき眠ってたじゃないか。大きないびきをかいて」
「大きな、は余計よ」
 薫はマルコンを撫でるように蹴ると、胸ポケットから煙草の袋を取り出した。
「ライターある」
「ごめん、今禁煙中なんだ」
「嘘」
「ほんとに」
「ふうん」
 薫は煙草の袋をポケットに戻すと、仰向けになった。
「で、誰だと思う」
「電話の主が」
「だいたいの目星はついてるんでしょう」
「そうだね、全く見当がつかないってことはないよ」
「さすがは向日町公平ね」
「だけど、今一つ確信が持てなくてね」
「どうして」
「どうしてって、あいつはとっくの昔に死んでるからさ」
 薫は乾いた笑い声を上げて、
「どうやって死人が電話をかけてくるのよ」
とからかうような口調で言った。
「そうさ、それが問題なんだ」
 俺は、デスクの上の古い黒革の手帳をゆっくりと開いた。
「でも、鍵がここにある。謎を解く大きな鍵が」
by figarok492na | 2014-08-31 04:34 | カルタ遊び
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