☆京都学生演劇祭Cブロック C-3
ウトイペンコ(京都大学)
『タイヤキ』
脚本・演出:疎いペン子
(2014年8月31日18時上演開始/元・立誠小学校音楽室)
<たい>ことを<たい>せよ
<たい>ものを<たい>せよ
とは、里見弴が文章文体の入門編として著した『文章の話』<岩波文庫>の肝ともいうべき言葉だけれど、以前ヘルベチカスタンダードに所属していた柳澤友里亜を主宰とするウトイペンコの『タイヤキ』は、やりたいことをやり、仕掛けたいものを仕掛け、伝えたい想いを伝えた、それこそ「<たい>ことを<たい>し」「<たい>ものを<たい>した」大した舞台であった。
身体性や言葉の遊びを重視しつつ、ノスタルジックでリリカルな作風は、当然柳澤さんのこれまでの演劇的体験の体現と考えて間違いはないだろうが、古野陽大の正直者の会等での体験もそこに加味されているのではないだろうかと、僕は思ったりもした。
物の移動も含め、様々な所作、処理が必要とされていることもあって、舞台上の流れが何度か途切れてしまうきらいは否めなかったが、彼女彼らが生み出すおかかなしさと美しさ、そしてその根底にある切実さは強く印象に残った。
より広い会場、そしてより長い時間でのウトイペンコの上演に、僕はぜひ接してみたい。
がわが先か餡子が先かはひとまず置くとして、野村眞人の体格様態が「たいやき」という登場人物、のみならず『タイヤキ』という作品を体系づける大きなきっかけとなったことは事実だろう。
共演陣の期待によく応えていたと思う。
また、柳澤さんも強い存在感を示していたし、これまで喀血劇場の一員として活躍してきた古野君も芝居達者ぶりを発揮していた。
できることならば、柳澤さんとのWキャストである小高知子が出演した上演のほうも観ておきたいのだが。