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ネーメ・ヤルヴィが指揮したウェーバーとヒンデミット

☆ウェーバー:序曲集&ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容

 指揮:ネーメ・ヤルヴィ
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団
(1989年4月28日~30日、ロンドン・聖ジュード教会/デジタル・セッション録音)
<CHANDOS>CHAN8766


 知名度のアップという派生的効果も含めて、CDという媒体を巧みに利用した指揮者は誰かと問われれば、僕は躊躇なくネーメ・ヤルヴィの名を挙げる。
 もちろん、ネーメ・ヤルヴィの実演達者ぶりなら、今から20年前のヨーロッパ滞在中にケルンWDR交響楽団との定期公演(1994年2月25日、ケルン・フィルハーモニー)で直接触れているので、彼が単なる内弁慶、ならぬスタジオ弁慶でないことは充分承知している。
 けれど、当時の手兵エーテボリ交響楽団やスコティッシュ・ナショナル管弦楽団を指揮して、CHANDOS・BISの両レーベルに録音した数々のCDが彼のキャリアを強固なものへと導いたこと、そして功なり名を遂げた今もコンスタントにCDをリリースし続けていることも、また確かな事実だろう。
 ヒンデミットの『ウェーバーの主題による交響的変容』と、その第2楽章「トゥーランドット・スケルツォ」の元ネタであるウェーバーの劇音楽『トゥーランドット』から序曲と行進曲、さらには『オイリアンテ』、『魔弾の射手』、『オベロン』、『幽界の支配者』の序曲4曲を加えた一粒で何度も美味しいこのアルバムは、そうしたネーメ・ヤルヴィの幅広い録音活動を象徴した一枚だ。

 おどろおどろと物々しく始まって、特撮映画や大河ドラマ『炎立つ』のテーマ音楽のような安っぽい勝利に到るかのような『ウェーバーの主題による交響的変容』(1943年)は、ヒンデミットという作曲家の底意地の悪さとともに、ヨーロッパを跳梁跋扈していたナチス・ドイツに対するからかいと抵抗を示す作品だけれど、ネーメ・ヤルヴィはそうした含意に拘泥することなく、ストレートでエネルギッシュな演奏を生み出している。
 だからこそ、かえって、第1楽章や終楽章のグロテスクさ空虚さが際立って聴こえてきたりもするし、中国だけではなく、日本のなんとか節も彷彿とさせるような『トゥーランドット』の行進曲のいっちゃった感もよく表われているのではないか。
 序曲のほうも、裏表のない明瞭で快活な音楽づくりで聴きなじみがよい。
 フィルハーモニア管弦楽団は、ソロ・アンサンブル、なべて万全の仕上がりで、ネーメ・ヤルヴィの解釈によく応えている。

 ヒンデミットの『ウェーバーの主題による交響的変容』と、ウェーバーの有名な序曲を手軽に愉しみたいという方にはお薦めしたい。
 なお、ヒンデミットを省いて、『ペーター・シュモル』、『シルヴァーナ』、『アブ・ハッサン』、『歓呼』、『プレチオーサ』の序曲を加えたアルバムが別途リリース(CHAN9066。廃盤)されている。
 ご興味ご関心がおありの方は、こちらもぜひ。
by figarok492na | 2015-01-14 17:19 | CDレビュー
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