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ルサンチカ『春のめざめ』

☆ルサンチカ『春のめざめ』

 作:フランク・ヴェデキント
 構成・演出:河井朗
(2015年12月6日16時開演の回/京都芸術劇場春秋座)


 河井朗と近藤千紘を中心とした演劇ユニット、ルサンチカが今年度の京都造形芸術大学舞台芸術学科の卒業公演として上演したのは、フランク・ヴェデキントの『春のめざめ』だ。
 『春のめざめ』は、少年期から青年期へと移り行く中で性(生と死)の衝動に目醒め、大人たちとの桎梏に葛藤する十代半ばの若者たちの姿を描いた、ヴェデキントの出世作として知られている。
 河井君はそうした作品の性質を当然踏まえつつ、今現在に、それも卒業制作としてこの『春のめざめ』が上演されることの意味を示すべく様々な仕掛けを施していたし、登場人物の言葉や、舞台上の彼らの姿(疾走!)から、そうした切実な想いはよく伝わってきた。
 特に、少年少女たちが望むと望まざるとに関わらず、自らの変化に直面し、家族や社会と対峙せざるをえなくなったあたりには、それではお前は何をしてきたのか? 何をしているのか? と問われているように感じられてならなかった。
 また、若干邪劇風に傾きつつも、表現主義的な表現を現在に移し変える試みも為されていたし、それより何より、終盤のリリカルで感傷的でありながら、ある種向日的でもある表現は、京都学生演劇祭での『星の王子さま』や京都演劇フェスティバルでの『楽屋』とも共通する、ルサンチカの持ち味であり強みであるとも思った。
 ただ、そうした彼彼女らに好感を覚えるからこそ、そして、今回の上演から強い問いかけを感じ取ったからこそ、僕は彼彼女らとは異なる「スタイル」と異なる「心性」でもって表現活動を続けていくということを、あえてここに記しておきたい。

 近藤さんや永井茉梨奈(近藤さんで『サロメ』を観てみたいなら、永井さんでは『トスカ』を観てみたい)、高市章平、木村さやか、寺尾実里、伊藤帆乃香、河井君の演者陣は、各々の特性魅力や舞台芸術学科での研鑚のあり様と、作品公演に対する真摯さがよくわかる演技を重ねていた。

 最後に、河井君や近藤さんをはじめ、この公演に関わった全ての人たちの今後の一層の活躍を心より祈願したい。
by figarok492na | 2015-12-06 20:19 | 観劇記録
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