☆レーガー:モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ他
コリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団
<PHILIPS>422 347−2
レーガーの作品に加え、ヒンデミットの『ウェーバーの主題による交響的変容』が収められた、何とも渋めなつくりのCDだ。
と、言っても、耳になじみの悪いごちがちごちがちとした作品が並べられているという訳ではない。
かなたレーガーの『モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ』は、トルコ行進曲で有名なピアノ・ソナタ第11番の第1楽章のテーマを、タイトル通り変奏させ遁走させたもので、ブラームスの『ハイドンの主題による変奏曲』を意識して作曲したとしか思えない作品だ。
基本的には、メルヘンチックな穏やかでリリカルで夢見るような旋律は、レーガーお得意の作曲技巧でしっかりと組み立てられており、安心して聴き終えることのできる音楽になっている。
こなたヒンデミットの『ウェーバーの主題による交響的変容』は、ヒンデミットの意地の悪さが全面に押し出されたような作品*で、聴いていて実に小気味がいい。
特に、終曲「行進曲」の大仰な騒ぎっぷりは、ヒンデミットの面目躍如といったところではないか?
(*例えば、たぶんナチス・ドイツへのあてつけとか。この曲が作曲されたのは、第2次世界大戦中の1943年だから。あと、返す刀でマーラーを斬りつけているような気もする)
コリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団は、楽曲解釈的にも技術的にも非常に安定感のある演奏を行なっている。
(ヒンデミットは、もっと意地悪さを強調した演奏を好む向きもあるだろうが、あえて「抑制」したほうが、かえって作品の刺がはっきりすることもあるのでは、と思わなくもない)
どちらかと言えば通向きなCDかもしれないが、決して聴きにくく耳障りな音楽などではないので、オーケストラ音楽好きの方には、税込み1000円程度ならばお薦めしたい一枚だ。