☆ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、大学祝典序曲
シェロモ・ミンツ(ヴァイオリン)
クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィル
<DG/ドイツ・グラモフォン>423 617−2
今回は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲をメインにしたCDを聴くことにした。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲が未だにバロック時代のコンチェルト様式に片足を突っ込んだ構成だとすれば、こちらブラームスのヴァイオリン協奏曲は、独奏者と管弦楽の対比が明確となった近代的協奏曲の代表…。
と、弁じ立てたって、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の面白さや美しさはちっとも伝えられないな。
(それに、第2楽章における、ヴァイオリンそっちのけのオーボエ・ソロの活躍は、バロック時代のコンチェルト・グロッソの名残りとも言えないこともない訳だし)
まずは、何と言っても、抒情的な旋律が魅力のコンチェルトである。
ヴァイオリン・ソロはもちろんのこと、先述したオーボエ・ソロや、その他の管弦楽の伴奏を含めて、非常にリリカルでロマンティックな音楽に満ちあふれた作品になっているし、第3楽章のような劇的で華麗な側面も充分に持ち合わせている。
シェロモ・ミンツは、ヴァイオリンの艶やかな音色を活かしつつ、そうした作品の持つ性格を巧みに表現していると思う。
人によっては、アバド指揮ベルリン・フィルの伴奏ともども抑制が効きすぎているととらえるかもしれないが、繰り返し耳にすべきCDであることを考えれば、僕にはあまり不満には感じられない。
ヴァイオリン協奏曲で万全のバックアップを果たしたアバドとベルリン・フィルは、大学祝典序曲でも全く隙のない演奏を行っていて、このCDのもう一つの「聴きもの」にきちんとなっているのではないだろうか。
中古で、税込み1200円程度までなら、安心してお薦めできる一枚だ。
(国内廉価盤で再発されていたはずだが、現在では入手困難かもしれない)