☆京都市交響楽団モーツァルト・ツィクルスNr.21
指揮:鈴木 雅明 独唱:松井 亜希(ソプラノ) 座席:1階 2列16番 先日三遊亭圓楽師匠が亡くなったからではないけれど、日本のプロのオーケストラの定期演奏会やそれに準ずるコンサートに登場する指揮者の顔触れと、『笑点』の大喜利メンバーの顔触れにはなんだか共通するものがあるように思う。 むろん、オーケストラのほうは、『笑点』の大喜利メンバーよろしく、何かがなければ不変不動ということはなくて、このオーケストラならこの人、あのオーケストラならあの人と、それ相応の違いというものはあるのだが。 それでも、少なく見積もっても200人以上はいるはずの日本人の指揮者のうち、ほんの一握りの面々だけがプロのオーケストラの定期演奏会に登場できるという構図(闇カルテルでもあるんかいな?)は、やっぱり『笑点』の大喜利メンバーとつながる性質が潜んでいるんじゃなかろうか。 と、言っても、『笑点』の大喜利メンバーに林家たい平や春風亭昇太が新たに加入したように、日本のプロのオーケストラと指揮者の関係にも時代の波はそれなりに押し寄せているわけで、今回のモーツァルト・ツィクルスNr.21(11月14日、京都コンサートホール小ホール・アンサンブルホールムラタ)で鈴木雅明が初めて(ようやく)京都市交響楽団を指揮したのも、さしずめそんな時代の変化の表われと呼んでも過言ではあるまい。 なあんてことを、演奏を聴きながら考えたり考えなかったり。 (「君はね、言ってることがまどろっこしいんだよ、山田君全部座布団とっちゃいなさい」、とよぶ圓楽師匠の声あり) で、このコンサート、朝寝坊したこともあって(午前11時過ぎに起きてしまった…)、直前まで行こうか行くまいか悩んだが、気づいたときには部屋を飛び出し、地下鉄に乗って北山の京都コンサートホールへ向かっていた。 まさしく心の声に従ったということだが、こういう声には従うにかぎるね。 従って大正解、実に愉しい時間を過ごすことができた。 第一にその大きな理由は、休憩あけ一曲目のモテット『エクスルターテ・イウビラーテ』でソプラノの松井亜希の歌声に接することができたこと。 若き日のバーバラ・ボニーを彷彿とさせる、クリアで伸びがあってコケティッシュな声質が、ずばり僕の声の好みのストライクゾーンだったのだ。 加えて、バロックや古典派の様式をしっかり踏まえた歌いぶりにも好感が持てる。 第二部の聴かせどころで一瞬天にも昇る心地、になりかけてほんの僅かな声の変化に惜しいと思ったりするなど、細かいことを言い出せば言えないことはないが、全てのプログラムが終了し、アンコールで彼女が再登場したとき「待ってましたあ!」と声がかかったのもさもありなんの一語。 (なお、アンコールはドイツ語のコンサート・アリア「私の感謝をお受け下さい、慈悲の人よ」。輪をかけてコケティッシュ!) 今後もぜひ、彼女の歌唱に親しく接していきたいと思う。 一方、ピリオド楽器の演奏で著名な鈴木雅明の指揮だけに、今回の京都市交響楽団は両翼配置、レガートやヴィヴラートを抑制し、音楽の強弱のコントラストをはっきりつけるなど、いわゆるピリオド奏法を援用した演奏を行っていた。 こちらも細かいことを言い出せば言えないことはないし、2列目なんて真ん前の席に座ったものだから直接音(特にファースト・ヴァイオリン)中心の少しきつめの音響で、二曲目の交響曲第20番の第1楽章など、躁病親爺大噴火的な騒々しさだったが(おまけに繰り返しをきっちりやっていた…)、ラストの交響曲第34番ともども、その第2楽章は、音楽における「対話」の重要さが的確に示された演奏に仕上がっていたように感じた。 また、一曲目の歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲では、コーダ近くの長めの休止にもはっとさせられた。 京都市交響楽団も、限られた時間で指揮者の意図をくみ取る努力を充分に行っていたのではないか。 中でも、フルートやオーボエといった木管楽器のソロが美しく、強く印象に残った。 適うことなら、今度は鈴木さんと京都市交響楽団の組み合わせで、バッハやヘンデルを聴いてみたいものだ。 (あと、鈴木秀美と京都市交響楽団の組み合わせでハイドンを聴いてみたいなあ) いずれにしても、本当に愉しかった。
by figarok492na
| 2009-11-15 02:55
| コンサート記録
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